茨城県北から福島県南東部にかけての常磐地域には、「石炭」を含んだ地層が分布しています。今から3500万~3000万年頃前、北茨城周辺は海岸沿いに豊かな森や湿原が広がり、その中を川が流れていました。繁茂した植物はやがて地下で炭化し、石炭となりました。近代、常磐炭田の石炭は重要なエネルギー源として日本の発展を支えました。さらに、炭鉱をはじめ鉱業は地質学発展の原点となりました。北茨城の豊かな自然や文化に触れながら台地の成り立ちに思いを馳せてみましょう。
中郷鉱跡と産業遺跡
県道10号線と299号線の交差点付近にコンクリート作りの重厚な建造物が複数あります。中郷鉱跡です。中郷鉱は昭和46年まで採鉱をしていた北茨城を代表する炭鉱でした。周辺や石岡地区では石炭の積み出しをする施設や炭鉱世話所跡などが見られます。
石炭層と輪廻層
磯原町木皿の明徳小近くの上木皿バス停付近で、県道299号線から東に伸びる道に入ると、道路の両側に石炭を含む地層を見ることができます。石炭層は数枚見ることができ、砂岩層と泥岩層と共に繰り返し重なっています。
浄蓮寺の観音像と花崗岩・変成岩
浄蓮寺横の道を渓谷沿いに歩いていくと、石を彫刻して作られたたくさんの観音像が見えてきます。ここ上蓮寺の観音像は33体もあり、茨城百選にも選ばれています。観音像のもとになっている白っぽい石は「カコウ岩」といい、マグマが地下でゆっくり冷えて固まった岩石です。浄蓮寺渓谷沿いにはカコウ岩のほか、黒っぽい色をした岩石も見ることができます。これは「変成岩」といい、地下で火成岩や堆積岩が熱や圧力により性質が変わってできた岩石です。カコウ岩や変成岩は硬く、削られにくいので、しばしば滝や渓谷ができます。浄蓮寺渓谷の美しい景観は地質の特徴によってもたらされているのです。
二ツ島
磯原海岸に突き出た島とその隣にちょこんと顔を出す岩塊、これが二ツ島です。これらはもともとあった地層が波によって削られ波食崖になったものが、さらに削られ島として取り残されたものです。二ツ島は主に砂岩からなり、ホテル駐車場わきの崖では、砂岩層に炭化木や生物が彫った巣穴の化石(生痕化石)、砂が溜まるときにできた模様(斜交層理)などが見られます。
石炭はどのようにしてできるの?
石炭は湿地などで生育した植物がその場で堆積してできるものと、川や洪水などの流水によって遠方から運搬されてきた植物が湖や海など堆積し、石炭になるものがあります。通常、植物は堆積後に生物等によって分解されてしまいます。しかし、水中や湿地等、酸素の少ない場所に堆積した植物遺体は生物による分解が十分進まず次々にたまっていきます。その後、堆積した植物は土砂などに埋まり、長い年月の中で圧力を受け、地熱や嫌気性バクテリアなどの作用を次第に受け還元され、炭素のみが次第に蓄積されて石炭になります。
北茨城市へのアクセス
お車で
- 常磐自動車道 三郷ICから北茨城ICまで約1時間30分。
鉄道で
- JR常磐線特急で上野から磯原駅まで約2時間。